子のケータイ世界 親も知って
交流サイトにもトラブルの芽
震災後、緊急時の連絡用にとケータイを持たせた方もいるでしょう。携帯電話からネットにアクセスする中高生は少なくありませんが、その先のどんな世界が広がっているか、親も知っておく必要はないでしょうか。
「信じるだけではダメ」
中学3年の長男が携帯をねだり始めたのは、ちょうど1年前。新潟県の母親(44)は「長男の言動によるストレスで、食べても味を感じなくなるほど悩んだ」という。
高校2年の姉が中学生の頃、携帯を持つ友人は少なく、高校入学まで持たせなかった。長男は「皆持っているから」とせがんだが、「中2で持たせるのは早い」と考え、聞き入れなかった。
すると、ドアや壁を蹴って壊したり、壁や家具の扉に油性ペンで「死ね うざい」などと書きなぐったりした。
半年間、思い悩んだ末、クリスマスプレゼントとして買い与えた。「早く寝てメールはしません。
成績が落ちたら戻します」など12項目のルールを定めた「誓約書」付き。
成績が落ちて一度は取り上げたが、震災を機に再び与えた。万一のとき、連絡が取れないと心配だからだ。
イーメールやネットのアクセス記録を知りたいが、長男は暗証番号を設定し、ロックしてしまった。
「親が勝手に見ていいものか」という迷いもある。
子供の通信状況を調べるのをためらう親は多いが、NPO法人青少年メディア研究協会の下田博次理事長によると、欧米には「ペアレンタルコントロール(親による管理)」という考え方がある。子供のネット利用は、居間の家族共有パソコンから始め、 ①情報の判断力 ②自分である程度の責任をとる力 ③「危ないサイトは見ない」とうい自制力 ―がつくまで、親がチェックするのだという。
下田さんは「日本の親は『子どもを信じる』と言うが、携帯からネットにアクセスした子どもが、どんな世界に触れているか知っているだろうか。親が責任を持って、ネットとのつきあい方を教えてほしい」と話す。
仕組みを学ぶ講習会も
たとえば性的なサイトなどの閲覧を制限しても、アダルトサイトではない「健全サイト」が、トラブルの温床になっていることも少なくない。
ゲームサイトや会員制のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は、利用者同士が「交流」できる。自己紹介のページ(プロフ)があり、個人情報を簡単に書き込める。同協会が15歳の女の子のふりをして無料のゲームサイトに登録してみたところ、「直メしよ(直接メールしよう)」など男性からのメッセージが、1週間以内に複数、届いた。
同協会への相談では、サイト上のやりとりをきっかけに子どもと見知らぬダイン生徒のメール交換が始まり、子どもから住所を聞きだした男性が、自宅を訪ねてきたというケースもある。
携帯電話会社で進められる中高生向けの「フィルタリング」は、アダルトサイトなど、最小限のアクセスを制限する仕組み。
下田さんは、親が指定するサイトだけにアクセスできる「カスタマイズ方式 」を勧める。
メールはできるが、ネットには接続できないタイプの契約もある。
同協会は「ネットのリスク体験学習館」(http://wwww.ams.vg/contents/risk03.html)でネット上のトラブルを疑似体験できるようにしている。
下田さんは「まず親自身が交流サイトを使って、仕組みを知ってみては」と助言する。
PTAや自治体が、親向けの講習会を開くケースも増えているという。
子どもの携帯、親のチェックリスト
子どもの利用状況どれくらい知っていますか?
クラスの携帯電話所持率
1日のメール交換数
1ヶ月のおよその利用料金
よく利用しているサービス名や運営会社名
ブログ開設など情報発信経験の有無
有害サイトへの遭遇経験
携帯電話の主な利用目的
フィルタリングの範囲
男女別のトラブル傾向
男子生徒
・いたずら心によるネット犯罪
・誇示・誇張発言でのトラブル
・サイト上での詐欺被害
女子生徒
・生命・身体に関わる被害
・チケットやファッションの売買トラブル
・コミュニケーションのトラブル
「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」の中高生の親向け教材から
(朝日新聞2011.05.11)