しっかり学ぼう!新しいワクチンのこと~ポリオワクチンについて
◆日本はポリオと無縁?
ポリオというと、あまり耳慣れない病気かも知れません。
ところが1960年代に、日本でも大流行し、全国で約5600人の患者が出たのです。
保護者たちの切実な願いによって、当時のソ連とカナダから「生ポリオワクチン」が緊急輸入され、その後の定期接種化によって、患者数が急速に減少していきました。
おかげで現在、日本でも野性株ウイルスによるポリオ患者は見られません。
ところが世界には、まだ流行している国が3カ国あります。
ナイジェリア、アフガニスタン、パキスタンです。
でも感染症に国境はありません。
2011年8月には中国の新疆ウイグル自治区で、パキスタンから持ち込まれた野生ポリオウイルスによる患者が集団発生。
さらに北京でも、同区出身の学生の便からのポリオウイルスも確認されました。
隣国の大都市・北京となれば、いつポリオが日本に入ってきてもおかしくない状況ですから、国内で患者が発生していなくても、ポリオに対する警戒は今後も継続して続けるべきなのです。
◆なぜ予防接種が必要か
ポリオウイルスは口から入り、腸の中で増えます。
通常は、症状なくウイルスが排除されます。
しかし、増殖したウイルスが運動神経に入り込んでこれを破壊すると、手足に麻痺が現れ、その麻痺が残ってしまうのです。
また、呼吸金の麻痺を引き起こすと、死亡することさえあります。これが、ポリオが恐れられる理由です。
感染は、便を解して周囲に広がります。
でも感染者100人のうち、麻痺症状が見られるのは、わずか1~2人です。
残念ながら特効薬や治療法はありません。
また今働く意志のほとんどは、実際のポリオ患者を診たことがありません。仮に診断できたとしても、1人の患者の後ろにすでに大規模な感染者がいることを示します。
そのような理由から、ワクチン接種により予防が最も重要なのです。
◆不活化ワクチンを4回接種
生ポリオワクチンのおかげで患者はゼロになりましたが、一つ問題がありました。
それは副反応です。
生ワクチンには病原性を弱めた生きたウイルスが入っているので、最新の国内の報告では100万接種あたり1.4人の確立でワクチンによる麻痺症状が現れることがあります。
そこで、12年の9月から導入されたのが「不活化ポリオワクチン」です。
免疫作りに必要な成分だけを取り出しているので、麻痺の心配はありません。
現在、日本では単独の不活化ポリオワクチンと、4種混合ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン)が選択できます。
いずれも4回の接種が必要です。
過密な接種スケジュールを効率的にこなすには、肺炎球菌、ヒブ、B型肝炎ワクチンとの同時接種が有効です。
なお、11年3月に同時接種後の死亡例が報告され、接種が一時見合わされましたが、調査の結果、ワクチンと志望には直接的な因果関係が無いことが報告され、同時接種は再開されています。
現在、生ワクチンへの不安から、ポリオワクチンの接種率は低下した状態です。
海外から入るウイルスを警戒し、社会全体を守るためにも、接種率を高めておく必要があります。
新潟大学医学部 小児科教授 齋藤昭彦先生のお話 (朝日新聞朝刊 ワクチンの学校2012より)